製造業が原価管理ソフトを導入するメリットについて解説！

原価管理は頻雑な作業と複雑な計算方法があり、とくに製造業では、非常に多くの手間と時間を要します。そのため原価管理ソフトを導入して、効率化を図る会社も増えています。原価管理ソフトを導入することで得られるメリットには、どんなことがあるのでしょうか。原価管理ソフトでできること、導入の際に気を付けたいことなどを紹介します。

そもそも原価管理ソフトとは？

原価管理とは、推定される原価と実際にかかった原価を比較し、その差となる原因を解明する業務のひとつです。収益の向上と企業の成長を目的としています。一般的に企業の利益は、売り上げから原価を引いたものから成り立っています。単純に原価を縮小できれば、企業の収益は増えるというわけです。

原価管理によって打ち出されたデータは、「いかに原価を下げていくか」を考える材料にしています。部門別・工程別でコストがかかりすぎている点はないか、削減できるコストはないかなど、数値化することで客観的に判断できるようになるでしょう。業務改善を行い、少しでもコストダウンするため、原価管理は欠かせません。

しかし原価管理は、部署ごとのコストを総合的に計算する必要があり、実に頻雑な業務です。この面倒な業務を電子化して、効率よく高精度に原価管理できるようにしたのが原価管理ソフトです。原価計算と原価管理がおもな機能ですが、差異分析や損益分析、シミュレーション機能なども搭載されています。もちろん搭載機能は製品ごとに異なりますが、おもな機能についてそれぞれ簡単に説明します。

■原価計算機能

原価計算は目的や比較対象によって、数種類の計算方法があるようです。相場や過去の実績から計算した標準原価、ある製品に実際にかかった原価を算出する実際原価、2つの原価を比較するための計算も必要です。実際原価は仕入れ値や製造にかかるコスト、労務費や固定費などを加算して計算されます。

それぞれの製品によっても異なるため、作業量は多く、複雑で難易度の高い業務です。しかし原価管理ソフトなら、一度システムを設定してしまえばあとは自動的に計算が完了します。原価が正確に、迅速に確認できるようになり、タイムラグなく原価調整に取り掛かることも可能となるでしょう。

■差異分析・損益分析機能

実際の原価が計算できれば、目標との差異分析もスムーズです。現状の問題点もすぐに発覚するでしょう。問題点がわかれば、改善点も明確にしやすくなります。そのため、原価計算が迅速に行われれば、経営戦略にも活かすことができます。

■シミュレーション機能

部品やサービスを一定価格で仕入れる仕組みを作っていても、為替相場や原油価格の変動、社会情勢などで予定から大幅にずれ込むこともあるでしょう。シミュレーション機能とは、過去のデータや予想に基づき、今後の展望について簡単に予測できる機能です。仕入れ先の変更を検討する際にも役に立つでしょう。

製造業が原価管理ソフトを導入するメリット

原価管理の重要性と、それに付随する作業量がわかったでしょうか。ここでは、原価管理ソフトを導入するメリットについて解説します。

■人材不足の解消

一番のメリットはやはり、業務の効率化により人材不足が解消される点でしょう。昨今の人材不足は製造業もほかではありません。少子高齢化により労働人口が減少している現実に加え、製造業全体のネガティブなイメージから、人材不足は深刻な問題になっています。製造業においての原価管理は、会社の利益に直結する重要な業務です。

ひとつの製品を作るのにいくら原価がかかるか予定原価を算出し、実際の原価と比較します。予定原価と実際原価の差の原因は、どこにあるのか。その問題点や改善できる点を模索する材料となります。原価をExcelや手書きで管理していると、長時間の入力作業が必要です。

慎重に行っていても、人の手で入力すればミスも発生します。人的エラーの可能性は拭えないので、正確な原価管理ができているとは限りません。しかし原価管理ソフトがあれば、その負担は大幅に軽減されます。自社に必要な入力や出力を一度設定してしまえば、その後の作業が格段と楽になるに違いありません。

■原価管理を素早く共有できる

ご存じのように、原価は常に変動しています。時価ともいえる原価を、いかにスピーディーに計算し、把握するか。企業の経営戦略にはとても重要なことです。原価管理ソフトならリアルタイムの原価情報を共有でき、迅速な判断につながります。実際原価と予定原価を比較し、適切な目標設定ができるようになります。参照したいデータがあれば、検索してすぐに取り出すこともでき効率的です。無駄を把握し業務改善ができれば、今後の低コストも期待できるでしょう。

■シミュレーション機能を活用でリスクに備えられる

資材の高騰も製造業の課題となっています。為替相場や原油価格の高騰など、不安定な情勢が続く昨今。もしもに備えてシミュレーションをしておけば、どう対応するか対策を立てることができます。シミュレーション機能で計算された原価を見れば、改善点が明確になることもあるでしょう。シミュレーションはいわば避難訓練のようなもの。万が一に備えて体験しておくと、実際に不測の事態が起きても冷静に対処できるようになります。

原価管理ソフトを導入する際に注意するべき点

このように原価管理ソフトを導入すると、多くの恩恵を受けることが可能です。原価管理ソフトを導入したいと考える企業が多いのも納得できます。

ここからは、原価管理ソフトを導入するにあたり、注意してほしい点を紹介します。ERPと連携できるか、業種に合っているか、カスタマイズ性はあるか、サポート体制は充分。以上の4点についてそれぞれ解説します。

■ERPとの連携

すでにERPを導入している企業であれば、連携できる原価管理ソフトかどうかを確認しましょう。ERPとは企業の資源を統合的に管理することを指し、現在ではERPシステムと呼ばれるソフトウェアの使用も主流になりつつあります。ERPとの連携ができれば、システムの反映もスムーズになり、さらなるスピード感が期待できます。しかし導入や稼働にはコストが必要です。費用対効果を計算して選ぶといいでしょう。

■業種の確認を

自社の業種に合っているかも重要です。業種特化型はすぐに運用できて便利ですが、間違った選定をしてしまうと、計算方法を新たに設定する必要が出てきます。製造業なのに小売業に特化したソフトを選択する、またはその逆を選択すると、対応していない計算方法があることも。必ず自社の業種に合っているか、営業スタイルや計算方法に問題はないかを確認しましょう。

■カスタマイズ性の有無

いくら自社の業種に特化した製品であっても、運用していく中で必要な機能が見つからないこともあるでしょう。カスタマイズやアドオン開発が可能であれば、今後判明するかもしれない不備にも対応できます。

■サポート体制は充分か

これまで原価管理ソフトを使ったことのない企業ならば、サポート体制が手厚いかどうかも重要です。導入してしばらくはトラブルが発生したり、使い方に戸惑ったりすることもあるでしょう。丁寧なサポートがあれば、最短で使いこなせるようになります。

まとめ

企業の利益を伸ばすには、売り上げの向上とコスト削減、この2本柱が基本です。原価管理ソフトを導入すれば、原価管理が最大限に効率化され、迅速に収益を上げる手助けとなるでしょう。原価変動や為替の値動きなどのリスクにも備えられるはずです。製品によって、搭載機能や利用方法は大きく異なるので、いくつか比較・検討して導入を決めましょう。