原価管理とは？目的やメリット・具体的な方法を解説！

企業にとって、利益を最大化することは永遠の課題です。そのために必要なのが、製品やサービスの原価を把握し、適切に管理することです。しかし、原価管理と聞くと、難しそうで、何をすればいいのかわからないと感じる方も多いのではないでしょうか？そこで今回は、原価管理とは何かわかりやすく解説していきます。

原価管理とは？

原価管理とは、製品やサービスを製造・提供するために必要な費用を管理することです。単に原価を計算するだけでなく、目標と実績を比較分析し、コスト削減や利益向上につなげるための活動も含まれます。原価管理は、製造業を中心にさまざまな業種で取り入れられています。

正確な原価予測ができるようになると、利益目標や予算が立てやすくなります。したがって、原価管理は、経営計画や財務にも関わる重要な業務の一つと言えます。原価を正しく計算し、適切に管理・改善することが大切です。

原価管理と予算管理の違い

原価管理と似た言葉に、予算管理があります。原価管理と予算管理との違いは、予算管理のほうが広義だということです。原価管理は、製造原価の目標と実績を確認し、利益が出るように管理を行います。

一方、予算管理は、すべての部門における予算と実績の分析、予算編成などを行うものです。原価管理は予算管理を行うために必要なものとなります。

原価管理と原価計算の違い

原価計算は原価管理であるかのように思われますが、原価計算しているだけでは原価管理をしていることにはなりません。原価計算とは、製品やサービスを提供するためにかかった費用を計算することです。

原価管理には、基準になる原価から外れないように統制したり、基準より原価を下げる取り組みをしたりといったことも含まれます。つまり、原価管理をするために、原価計算が必要になるのです。

原価管理の目的とメリット

原価管理には、大きく3つの目的があります。

利益確保・利益拡大

原価管理の最大の目的は、自社の製品やサービスがどれほどの利益をもたらしているのかを把握することです。自社の利益を正しく把握し管理することで、利益確保、利益拡大につなげていくことが目的です。

原価管理が行われていない場合、製造した製品に対していくらの値段をつければ利益が上がるのかということがわかりません。原価管理をすることではじめて、利益をあげるための最適な価格設定が可能になります。

原価管理によって、自社の製品やサービスがどれほどの利益をもたらしているのかを把握することができます。そして、その情報を基に、販売価格を調整したり、新たな販路を開拓したりすることで、利益を最大限に引き出すことができるのです。

コスト削減

原価管理を行うことで、無駄なコストがわかります。無駄なコストを洗い出して削減していくことを、原価低減と呼びます。原価管理のなかには、製品を製造するための仕入費だけではなく、経費、労務費、流通費といったものも含まれています。

それぞれの項目について、削減できる部分はないかを一つずつ見直していくことがコスト削減につながります。細かなコスト削減が大きな原価の減少となるのです。例えば、仕入先の変更や、製造工程の見直し、在庫管理の徹底など、様々な方法でコスト削減を図ることができます。

原価管理によって無駄なコストを徹底的に洗い出すことで、企業は大きな利益を上げることができます。

リスク管理

原価管理をすることで、リスク管理も一緒に行うことができます。原価管理をしないと、販売価格に対して仕入れ価格がどれほど占めてよいものかを想定できません。仕入れ価格と販売価格のバランスが取れずに、損失が生じる可能性があるのです。

継続的に原価管理をすることで、原価がどのように動いているかを知ることができます。原価変動のリスクを予測し、対策を立てることが可能です。

例えば、原材料価格の変動リスクに対して、ヘッジ取引を行うことで損失を回避したり、為替リスクに対して、外貨建資産と外貨建負債をバランスさせることでリスクを軽減したりすることができます。原価管理によって、原価変動による損失リスクを回避することで、企業は安定的な経営を実現することができます。

原価管理の具体的な4つのステップ

原価管理は、以下の4つの手順で行われます。

標準原価を設定

標準原価とは、製造にあたって目標とすべき原価のことです。製品に対して使われている原材料の量や価格、その他さまざまな要素から算出されます。標準原価は概算で算出されるため、実際の原価とは完全に一致しません。

一方、実際にかかる原価のことを実際原価といいます。標準原価の設定は、実際原価の差異分析により、どの部分が無駄になっているかを明らかにし、改善につなげることが目的です。標準原価を設定することで、目標となる原価を明確にできます。

そして、実際の原価と標準原価を比較することで、原価管理の状況を把握できます。

例えば、ある製品の標準原価を1,000円と設定した場合、実際の原価が1,200円であれば、200円の差が生じていることになります。この差を分析することで、原材料費が高騰しているのか、生産工程に無駄があるのかといった問題点を特定することができます。

原価計算

原価計算は材料費、労務費、経費のすべてを合計して割り出すものですが、できるだけ正確に行うことが必要です。どのような小さな値でも、原価に含まれるものであればすべて計上するようにしましょう。原価計算には、標準原価計算・実際原価計算・直接原価計算の3種類があります。これらの原価計算を行うことによって、正確な利益がわかります。

原価計算を行うことで、製品やサービスにどれほどの費用がかかっているのかを把握することができます。

そして、その情報を基に、価格設定やコスト削減などの経営判断を行うことができます。例えば、原価計算の結果、原材料費が全体の原価に占める割合が大きいことがわかった場合、原材料の仕入先を変更したり、代替品を使用したりすることで、コスト削減を図ることができます。

差異分析

標準原価と実際原価との差を分析することを、差異分析といいます。差異分析は、以下の3つの項目に焦点を当てて行います。

直接材料費：原材料の仕入価格や使用量
直接労務費：作業員の工賃や作業時間
製造間接費：工場の賃料や光熱費

これらの項目について、標準原価と実際原価の差を分析することで、問題点を特定することができます。

例えば、直接材料費の差異が大きい場合は、原材料の仕入価格が高騰しているのか、使用量が無駄になっているのかといった問題が考えられます。一方、直接労務費の差異が大きい場合は、作業員の作業効率が低いのか、作業時間が無駄になっているのかといった問題が考えられます。

改善

差異分析によって問題点が特定できたら、具体的な改善策を検討し、実行する必要があります。改善策としては、以下のようなものが考えられます。

・原材料の仕入先を変更する
・代替品を使用する
・生産工程を見直す
・作業員の教育・訓練を行う
・設備を更新する

改善策を実行することで、原価を低減し、利益を向上させることができます。原価管理は継続的に行うことが重要です。定期的に標準原価を設定し、原価計算を行い、差異分析を行うことで、常に原価管理の状況を把握し、改善につなげていくことができます。

まとめ

原価管理は企業にとって重要な業務です。製品やサービスの製造・提供にかかる費用を把握し、適切に管理することで、利益を最大化することができます。原価管理の具体的な手順は、標準原価の設定、原価計算、差異分析、改善の4つです。

標準原価を設定し、実際原価と比較することで、無駄なコストを洗い出し、コスト削減につなげます。差異分析を行い、問題点を特定したら、改善策を実行して原価を低減し、利益を向上させることが大切です。原価管理は継続的に行うことが重要であり、定期的に業務を見直していくことが企業の成長につながります。