食品業の原価管理ソフトの活用例
在庫および原価の管理はどの業種においても重要ですが、食品業界では在庫や材料の取り扱いが特殊な面があるため、把握・管理に困っている担当者も多いです。ここでは、食品業において原価管理ソフトを導入し運用する際の具体的な活用例について、そして発生しがちな課題点とシステムを用いて改善する方法に関して解説していきます。
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導入することにより解消できる課題をチェック
食品業に所属する企業が原価管理ソフトを導入する前に、課題点を意識しておくことが大切です。さらにはソフトを使用することにより、その課題が解消できる問題かどうかも重要になります。多くの企業が導入に至る理由の一つに、製造やサービスの提供におけるコストが不明瞭な状態になっていることが挙げられます。
収益を伸ばすには原価の標準値と実際の値を見極めて、現状における浪費・非効率な箇所を削ぎ落とすことが不可欠です。そのために従来よりも厳密に、なおかつ的確に原価管理を行えるシステムを導入するというわけです。取引先および顧客によって品質管理の度合いが異なる上に、現状把握とその運用が担当者の経験値に依存されている場合も該当します。
業務レベルの格差、ばらつきが発生しやすく、事業の成長が思うように進まないという問題は、単一ソフトだけでなく複合的なシステムと組み合わせることで、情報や問題の共有がスムーズになり業務の効率化も図れます。また食品業の特色ともいえますが、原材料・半製品をそのままの状態で販売するケースも課題となりやすいです。市場においての素材の原価は常に変動するため、その情報を迅速かつリアルタイムで受け取っていなければ大きな損失にもつながりかねないからです。
原価管理のクオリティアップに活用する場合
消費コストを下げて収益の向上を図り、将来的に事業を成長させて行く上で、原価管理のクオリティアップは必要不可欠です。これまで行っていた原価管理よりも品質を向上させるには、原価管理ソフトの導入は大きなアドバンテージとなります。実際に導入した際に行われる、実用的な活用方法は複合的なソフトを併用するケースです。
生産や製造の他さまざまな部門におけるデータの管理を一元化することにより、業務全体の把握がスムーズになります。標準および実際の原価額の両方のデータをソフトで算出・管理できるだけでなく、品目ごとの製造に必要なコストの詳細も把握できる点も大きいです。
全体にわたる大雑把な数値だけでなく、品目によって異なる製造コストが透明化されるため、細かい問題にも気付きやすく対処が手早くできます。また必要なデータを自動的に収集してくれるため、工程・品目ごとに生じる粗利の差異の算出も容易です。また、算出されたデータをレポートとして出力できるため、全体への問題共有も素早く行える点も魅力の一つです。
顧客ごとに異なる品質管理を整備できる
食品業への原価管理ソフトの活用術は、売上の向上だけに留まりません。顧客ごとに異なっている、品質管理の要件を均一化して効率を高めることも可能です。全体の作業ならいざ知らず、顧客ごとの情報は多くの場合それぞれの担当者が把握している方がスムーズであると思われがちです。
しかし一見効率的に見えるのは形だけであり、その実情は担当者に依存する属人化を促進することにつながってしまいます。担当者に対しての負担が大きくなるだけでなく、業務レベルがばらついてしまうことも問題です。ソフトを活用して、原材料の仕入れから製品の出荷に至るまでの各部門のトレースを行います。原材料から製品に至るまではもちろん、製品から原材料に至るまでの反対の工程についてもカバーできます。
ロット単位で品目や消費期限、品質検査結果などを管理および照会が可能です。加えて顧客ごとの規格値についても、同時に管理ができます。結果的に人員ごとの知識・経験量の差が埋まり、各々の顧客対応力の向上につながります。また複合システムを導入することにより、必要な情報の照会も可能です。
原材料ごとに異なる形状・単位の差を埋める
食品業における管理面での課題に、荷姿および単位の差異が挙げられます。原材料によって形状が異なり、在庫管理が困難になるというわけです。たとえばリンゴであれば個数で判断しますが、小麦粉などの粉末形状であれば重量で判断するのか袋の個数で把握するのか悩みどころです。
同様に液体であったり、バナナのように複数の形状が単一のものとしても数えられる品目であったりなど、在庫管理担当者や経営者は頭を悩ませていることでしょう。この場合は、複合システムに搭載されていることが多い、拡張単位変換機能を活用します。品目によって入荷・出荷する際の、複数の形態の荷姿を登録し管理することが可能です。変換についても自動的に行うことができるため、的確に在庫の管理および業務スピードを改善できます。
リンゴであれば個数・箱・重量での3種類の荷姿を登録ができ、それぞれデータを把握する際に必要な種別に切り替えて算出や管理ができるようになるというわけです。小麦粉など粉末形状の材料に関しても重量や袋の数・箱を登録できるため、売上やコスト面だけでなく、製造計画などにも活用できます。
原材料をそのまま製品として取り扱う場合の管理に活用する
小売業はもちろん飲食業であっても、原材料をそのまま製品として出荷および販売することもあります。食品業以外であれば製造および加工することが基本となりますが、業種の特色であり適切に管理する上では見過ごせない部分です。
仕入れロットのみの製品と、製造ロットもともなう製品とではコスト・経費の計算が異なるため複雑化しやすいポイントとなります。原価管理ソフトにある品目を整理する機能を活用することで、原材料は当然ながら製品・半製品も一元的に管理することが可能です。在庫の把握はもちろん、事業計画を立てる際や販路・仕入れルートを見直す際などさまざまな面で活躍します。
また市場の流れにより、販売単価を調整しなければならない場合においてもソフトが活用できます。市場の単価や情勢を的確にキャッチできるため、商機に応じた単価の調整がスムーズにできるというわけです。担当者によって異なる方法やノウハウに関しても、情報を共有することで全体的な作業・業務の効率化が図れます。業務を見直したい場合についても、同様に可視化されることで効率がアップします。
従業員の負担を減らすことができる
原価管理ソフトには多種多様な機能が搭載されており、上手く活用することでこれまで従業員が行っていた作業の労力が大きく軽減されます。まずは作業が減ったことにより、人為的なミスを防げることがメリットとして挙げられます。不良品や保留扱いとなっている品目がロックされることにより、誤って投入されることを未然に防げるのは大きな魅力です。
先入先出運用を徹底できたり、有効期限や賞味期限を管理できたりする点も見過ごせません。製造設備の稼動状況を自動的に取得できるため、モニタリングおよび分析が可能な点もよいところです。他にも生産および販売・在庫調整によって、需要の変動に上手く対応できる点も利点といえます。
システムを用いた需要予測を活用し販売計画を立案したり、短期間サイクルにおける生産計画を見直したりなど、企業が成長していく上での施策を立てる際にも役立ちます。日々の販売実績のデータ取得に基づき、製造および調達の計画を立案したり、生産計画を自動化してスケジュール管理の手間を省いたりできるなど、業務の効率化に大いに貢献する機能です。
あらゆる業種において原価管理ソフトを導入するメリットは大きいですが、品目によって異なる荷姿・単位や製品ごとに変動するコストなど、食品業ならではの特色に対して強いソフトを選べば、より大きな成果が得られます。企業が持つ課題点や利用する際の用途・目的を明確にした上で導入すれば、収益や作業効率の向上効果はさらに高まります。