原価企画とは?実施方法や成功のポイントを解説!
現代の厳しい競争社会において、企業にとって利益を最大化することは最重要課題のひとつです。そこで、近年注目を集めているのが「原価企画」という手法です。本記事では、原価企画とは何か、なぜ必要なのか、どのように進めるのかについて詳しく解説していきます。原価企画を理解し、実践することで貴社の利益向上に貢献できるでしょう。
原価企画とは?注目される理由
原価企画とは、製品を企画段階から、販売価格、利益率、製造原価などの目標を設定し、その範囲内で開発・製造・販売をおこなう仕組みです。従来の製造後原価計算とは異なり、製造前からコストを意識することで、無駄なコストを削減し、利益を最大化することを目指します。原価企画が注目される理由は、以下の3点が挙げられます。
消費者主導の市場環境
かつては、企業が作った製品は売れる時代でした。しかし、近年はインターネットの発達や消費者のニーズの多様化により、必ずしも作った製品が売れるとは限りません。
消費者は価格や品質を比較検討し、納得できる商品を購入する時代です。従来の「作れば売れる」という考え方は通用せず、消費者が求める価格帯で高品質な製品を提供することが求められています。
原価企画は、販売価格を念頭に置きながら製品を開発することで、この課題を解決します。具体的には、市場調査や競合分析をおこない、消費者のニーズや価格帯を把握したうえで、製品の仕様や機能を決定します。
また、原価目標を達成するために、部品や材料のコストを徹底的に分析し、低コストで高品質な製品を実現します。
短縮化する製品開発サイクル
近年は、市場環境の変化が速く、製品の開発サイクルも短縮化しています。新製品を迅速に市場に投入することが求められるなか、従来のように製造後に原価を計算していては、開発に時間がかかり、競争力に劣ってしまいます。
原価企画は、開発段階から原価を意識することで、開発期間の短縮とコスト削減を同時に実現します。製品の企画段階で、販売価格、利益率、製造原価などの目標を設定することで、開発の方向性を明確にし、無駄な作業を省けます。
また、設計段階からコストを意識することで、試作品製作や設計変更の回数を減らし、開発期間を短縮可能です。さらに、原価管理システムなどのツールを活用することで、原価計算やコスト分析を効率化し、開発全体のスピードアップを図れます。
多品種少量生産への対応
消費者のニーズが多様化している現代では、多品種少量生産が求められています。しかし、従来の大量生産方式では、品種ごとに原価を算出することは困難です。原価企画は、製品ごとの目標原価を設定することで、多品種少量生産にも対応できます。
製品ごとに異なる機能や仕様をもつ多品種少量生産においては、従来の平均原価計算では、正確なコスト把握が難しくなります。原価企画では、製品ごとに目標原価を設定することで、それぞれの製品のコストを明確に把握できます。
また、目標原価達成のために、製品ごとに最適な部品や材料を選択したり、製造工程を工夫したりすることで、コスト削減を図れます。このように、原価企画は、消費者主導の市場環境、短縮化する製品開発サイクル、多品種少量生産への対応といった、現代の経営環境における課題を解決するための有効な手法と言えます。
原価企画を成功させるための3つのステップ
原価企画を成功させるためには、以下の3つのステップを踏むことが重要です。
目標原価を明確に設定する
原価企画の出発点は、目標原価の設定です。目標原価は、製品の販売価格から目標利益率を差し引いて算出します。販売価格は、市場価格、類似品価格、希望価格などを参考に設定します。市場価格は、消費者が実際に支払っている価格です。
類似品価格は、競合他社が販売している類似品の価格です。希望価格は、得意先が希望している価格です。これらの価格を参考に、企業の経営戦略や市場環境などを考慮して、適切な販売価格を設定する必要があります。
目標利益率は、企業の経営目標にもとづいて設定します。目標利益率は、製品販売によって得られる利益の割合を表します。目標利益率は、企業の財務状況や業界の平均利益率などを考慮して、適切な値を設定する必要があります。目標原価は、以下の式で算出します。
「目標原価 = 販売価格 – (販売価格 × 目標利益率)」
たとえば、販売価格が1,000円で、目標利益率が30%の場合、目標原価は700円となります。
コスト意識の高い設計をおこなう
目標原価を達成するためには、設計段階からコストを意識することが重要です。具体的には、以下の点に留意する必要があります。部品や材料のコストは、製品全体の原価に大きな影響を与えます。
設計段階では、さまざまな部品や材料のコストを調査・分析し、できるだけ低コストで高品質な部品や材料を選択する必要があります。製品機能は、顧客にとって必要不可欠な機能と、あれば便利な機能に分けられます。
設計段階では、顧客にとって必要不可欠な機能に絞り込み、不要な機能は排除することで、コストを削減できます。必要に応じて、専門家や他社との協力を検討することで、より効果的なコスト削減を実現できます。
たとえば、部品の設計や製造を専門とする企業に協力を仰ぐことで、低コストで高品質な部品を調達できます。
達成率を評価し、改善を継続する
製品が完成したら、目標原価達成率とコストダウン率を算出します。目標原価達成率は、以下の式で算出します。
「目標原価達成率 = (標準原価 / 目標原価) × 100」
たとえば、目標原価が700円で、標準原価が650円の場合、目標原価達成率は92.9%となります。また、コストダウン率は、以下の式で算出します。
「コストダウン率 = (見積原価 – 標準原価) / 見積原価 × 100」
たとえば、見積原価が800円で、標準原価が650円の場合、コストダウン率は18.8%となります。目標原価達成率やコストダウン率を分析することで、原価企画の成果と課題を把握できます。分析結果を踏まえ、次回の製品開発に活かすことで、原価企画を継続的に改善していくことが重要です。
原価企画を成功させるための3つのポイント
以下では、原価企画を成功させるための3つのポイントについて詳しく解説します。
経営層のコミットメント
原価企画は、企業全体の取り組みであり、経営層のコミットメントがなければ成功しません。経営層が原価企画の重要性を理解し、積極的に推進することが重要です。具体的には、以下の点に留意する必要があります。
経営戦略において、原価企画を重要な位置づけとし、経営目標達成に貢献する役割を明確にする必要があります。また原価企画推進のための体制を整備し、責任者や担当者を明確にしましょう。
また、定期的な会議を開催し、進捗状況を共有し、問題点を議論する必要があります。原価企画に関する知識や理解を深めるために、社員への教育・研修を実施することも重要です。
部門間の連携
原価企画は、設計部門、製造部門、販売部門など、各部門が連携して取り組む必要があります。各部門が目標を共有し、協力して取り組むことが重要です。具体的には、各部門が共通の目標を理解し、それぞれの立場でどのように貢献できるかを検討する必要があります。
各部門が保有する情報を共有し、円滑な連携を図り、情報共有ツールを活用するのも有効です。各部門が定期的に会議をおこない、進捗状況を共有し、問題点を議論する必要があります。
情報システムの活用
原価企画を効率的に進めるためには、情報システムの活用が有効です。原価管理システムなどを導入することで、データの収集や分析を自動化できます。具体的には、以下の点に留意する必要があります。
原価管理システムは、原価関連データを一元管理し、分析機能を備えています。原価企画の効率化に役立ちます。収集したデータを分析し、原価削減のポイントを特定できます。システムの機能や使いやすさを継続的に改善し、より効果的な活用を目指します。
まとめ
原価企画は、製品を企画段階からコストを意識することで、無駄なコストを削減し、利益を最大化することを目指す手法です。原価企画を成功させるためには、目標原価を明確に設定し、コスト意識の高い設計をおこない、達成率を評価し、改善を継続することが重要です。原価企画を理解し、実践することで、企業は競争力を強化し、持続的な成長を実現できます。