導入前に確認しよう!原価管理システムの大まかな機能とは?
原価管理システムは、原価管理や、原価計算ができるシステムです。販売管理、会計システムなど、多様な機能と連携できるので効率化の面で役立ちます。しかし、自社に合った商品を選ばなければ、効率改善のために費用を掛けたのに不便を感じてしまう可能性も。そこで、導入前に知っておきたい原価管理システムの機能や利点などをご紹介します。
原価管理システムの大まかな機能とは?
「原価管理システムにはどんな機能があるの?」と疑問に思われた方のために、まずは基本的な原価システムの機能をご紹介します。業種を問わず使える便利な機能として、大まかに4種類あります。
「原価計算機能」「原価差異分析機能」「損益計算機能」「配賦計算機能」があり、数字を入力するだけで自動計算が可能です。これまで手書きやエクセルで管理していたために起きた計算ミスを防ぎ、業務改善やコスト削減に役立つ機能を持っています。
■原価計算機能
主な原価計算機能は6種類。たとえば、個々の製品や生産ライン1台の原価計算は「個別原価計算」を、同製品を大量に生産した場合は、「総合原価計算」を使い、生産期間に消費した原価を計算します。製造にかかった全部の費用について原価計算する場合は、「全部原価計算」、部分的に掛かった費用を計算したい時は「部分原価計算」を使用するとよいでしょう。
また、特定の製品が完成された後、比較や統計をとるうえで便利な機能が2つあります。1つは実際に発生した原価を計算する「実際原価計算」。もう1つは商品に対する目安の金額を出した「標準原価計算」になり、両方を比較して原価を割り出します。その場限りではなく、次の生産計画に向けた資料づくりとしても役立つ機能です。このように、さまざまな原価計算機能が備わっているので、目的に応じた方法で活用しましょう。
■原価差異分析機能
原価差異分析機能は、「実際原価」と「標準原価」を分析する機能です。実際原価が高いとその分、利益が減っていることがわかります。「標準原価」と比較して特定の期間、どのくらいの差が出ているのかを分析していくことで、事業における問題点を見つけ出し、今後に活かせます。
■損益計算機能
損益計算書を簡単に作成できるこの機能を「損益計算機能」といいます。損益計算書とは「収益」、「費用」、「利益」の3つからなり、P/L(プロット・アンド・ロス)ともいわれています。1年間にどれだけの売上があり、それに対してどのくらいの費用が必要で、利益になったのかを製品別や部門に分けて計算できるのが特徴です。それぞれの切り口から計算した損益計算書や、来期の予算編成の資料など。役立つ場面は多く、利用されている企業は多々あります。
■配賦計算機能
製造原価には、製品にどのくらい費用が掛かったのかが明確になっている「直接費」と、工場全体で利用している光熱費や複数人で使用している設備費などの「間接費」があります。この間接費については、具体的に計算できないため、各企業で独自の基準が必要です。間接部門と直接部門にわける「部門別配賦」や、製品別に割り当てる「製品別配賦」など、方法はいろいろありますが、数字として計上することを「配賦」といいます。配賦計算機能は、「売上」や「工数」、「時間」などを入力すれば自動で計算が可能です。部署や部門が多い企業で役立つ機能といえます。
原価管理システムを導入する利点
原価管理システムを導入すれば、ただ数字を把握できるだけではありません。他にも大きな利点がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
■シミュレーションができる
原価管理システムを導入することで、リスク管理や経営戦略の立案に役立ちます。製品によってはオプションでシミュレーション機能を備えたものがあり、社会情勢や環境の変化で製品が入らなくなり、代替品を急変更しなければならない場合もシミュレーション機能を使い、簡潔に行えます。目先の利益だけではなく、「もし、○○だったらどういう結果になるのか」といった、幅広い視野でシミュレーションできるのが魅力です。
■自社で管理しているシステムと連携できる
ERP(総合型基幹業務システム)を自社で管理している場合、原価管理システムとの連携が可能です。販売システム、在庫管理システム、会計システムなど幅広い分野で、会社の情報を取り込んで反映できます。連携すれば、過去の情報を「調べたい」と思った時に瞬時に検索できるので、業務の効率化のためにもおすすめです。
■人件費の削減ができる
原価計算は手書きやエクセルで管理している企業にとって入力作業が負担になっている場合が多いと思います。人為的なミスはどうしても起こる可能性がありますが、原価管理システムを使えば、入力処理に掛ける時間やミスが起きた場合も安心です。残業時間が減ることで、人件費の削減にもつながります。
■困った時にサポート対応も可能
「導入してもトラブルがあったときにどう対処していいかわからない」と、一歩を踏み出せない方は、サポート対応が可能な原価管理システムがおすすめです。困った時に相談できるので、はじめて原価管理システムを使用する場合にも安心できます。
原価管理システムを導入する際に意識するべき点!
原価管理システムの種類を検索するとさまざまな特長を持ったソフトが出ています。ソフトによって打ち出している強みがありますのでより、自社に合わせた原価管理システムを選ぶことをおすすめします。どんなことを意識すればいいのかご紹介します。
■どんな課題があるのか、目標を明確にすること
原価システムを選ぶ前にまず、自社が現在抱えている課題を明確にしましょう。たとえば、「今まで管理していたエクセルデータをこれからも使いたい」「既に使っている原価管理システムは他のツールと互換性がなく不便なことが多いから変えたい」など、課題に思っていることを書き出せば、原価管理システムを選ぶ時に優先しなければいけないことがより明確になります。また、問題だけではなく、今後どのようにしていきたいかを考え、目標を定めていくことも重要です。
■提供形態を確認しよう
どのような受け皿で原価管理システムを導入すればいいのか見極めましょう。おすすめは、これまで入力してきたデータ活用する方法です。まずは、提供形態を確認しましょう。一般的にシステムは「ERP型(統合業務ソフト)」、「オンプレミス型」、「クラウド型」の3種類があります。会計や人事などの部門でERPを使用している場合、原価管理システムと連携させ、自社保有のシステムに反映できます。
オンプレミス型は、自社にサーバーやネットワークを保有しているかたちをいいます。連結することで過去の実績、原価などの情報を比較できます。クラウド型は、インターネットからサーバーへ接続してシステムを流用するかたちのことをいいます。こちらは、ネットワーク機器など環境を整備する準備する必要がないので、どこででもすぐにはじめられ、離れた場所にいるスタッフと同じデータを共有できる点に優れています。
■システムのメリットだけではなく、デメリットにも注目すること
原価管理システムを導入する場合、メリットだけではなく、デメリットにも注目することが大切です。たとえば、「利用開始手続きが複雑で導入までに時間が掛かってしまった」、「安価だと思って契約したものの、初期費用が掛かってしまった」、「導入したことでネットワークに負荷が掛かり、パソコンの動作が遅くなった」など、導入してから後悔する前にデメリットにも注目して検討しましょう。また、導入前に環境を整えておくことも重要です。
■セキュリティー対策の確認
システムを導入する上で気をつけたいのがセキュリティー対策です。データは企業の資産になるので、外部へ流出しないよう、しっかり対策しましょう。不安で導入に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。しかし現在、製品の多くはセキュリティー対策も万全になっています。パスワード管理、部門別や業務別のアクセス管理や外部出力に対して操作履歴やデータ更新履歴などデータ改ざん防止機能が搭載されたものなど、内部統制に対応した機能を持っているものもありますので、安心して導入できます。
原価管理システムには、優れた原価計算の機能や、運用することでさまざまな利点があることをお伝えしてきました。「意識するべき点」でもご紹介しましたが、自社に合ったソフトを選び、運用することがなにより重要です。原価管理システムを運営することは多少費用が必要です。失敗しないためにも、まずはどんな原価管理システムがあるか、どんな機能を持っているのか、製品を比較してみてはいかがでしょうか。