原価管理ソフトを建設業で取り入れるべき理由
今では業種を問わず、原価の把握や管理の大切さは認識されているものです。中でも建設業は特有の事情があるため、原価管理が非常に重要になります。ここでは特に建設業で原価管理ソフトを取り入れるとよい理由について考えます。
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原価管理が重要になってきているのはなぜか
今では、ほぼすべての業種において原価の把握は大切です。そう聞くと「原価計算」を頭に思い浮かべる方もいますが、現在では「原価管理」を重要視する会社が圧倒的に多いと言えます。
まず、原価計算はその会社の製品やサービスの原価を計算することです。原価がいくらなのかを明確に示すことになりますが、それはあくまでツールであって、その後の展開に生かす必要があります。たとえば経営の意思決定に役立てたり、財務諸表を作成したり、予算を作成したりと言ったことです。
さらには、価格を適正にするために材料を変更したり、人件費の削減を考えたり、運送費の見直しをすることも関係します。これら原価計算を元に様々な行動や決定に役立たせるのが原価管理ですので、企業の利益を確保するためにも重要になってくるのです。
特に建設業は、様々な特殊な状況や計算方法が必要になるため、人海戦術で行ったとしてもヒューマンエラーが出て重要な数値を見落としたり、スピーディーに数値ができないことも多々あります。ひいては会社の経営や将来の計画に大きく影響することを考えると、原価管理ソフトの導入を検討するのは大切なことです。
タイムリーに把握できる
原価をマネジメントする上で大事になるのは、数値を迅速かつ正確に把握する作業です。建設業においてこの作業はボリュームのあるものとなります。
なぜなら、大抵の会社は複数の案件を扱っており、それぞれに材料費・労務費・経費がかかることに加え、外注費のウェートが多いので、それも原価として加える必要があります。
さらに、共通の費用とされる間接費を各工事ごとに配賦する作業が必要になります。また、工事進行基準を適用している会社であれば、期間ごとの原価計上の度合いを考える必要もあります。それらを人手に頼ると、ヒューマンエラーは避けられませんし、数値を把握していたとしても様々な種類の計算方式を瞬時に出すことは難しいものです。
建設業特有の複雑な原価の仕組みに対応する原価管理ソフトであれば、目的別に必要な計算書類を簡単に出力することができますし、工事ごとの予想もタイムリーに把握できます。会社だけでなく、JV会社の原価管理も容易に行えるなど、用途に応じた金額の把握が楽になりますので、ソフトを使用するメリットがあると言えます。
原価差異分析を経営指標とできる
人手不足は業界を問わず叫ばれていることですが、建設業界はその影響が特に深刻です。材料も高騰していますし、海外からの調達を行う場合は為替の影響が大きく価格に影響する場合があります。
そしてこれらの情報が経営サイドに行くまでには相当の時間がかかってしまうことも少なくありませんので、気が付いた時には原価が大きく変動していたと言うことも多々あります。原価管理ソフトを使用すると、資材原価や労務情報・固定資産・出来高・作業内容を入力しておきさえすれば、多様な視点での売上・原価の集計をすることができます。
さらに、ボタン一つで工事や工期ごとの原価予想を把握できたり、データ分析を見やすいフォーマットで出力することが可能です。予算と実績の分析などもできる機能が搭載されていますし、当初予算と変更後予算など段階に応じた予算管理ができるようになっているものもあります。
その時々の調整を反映した数値を即座に見たい時などには特にソフトの力が生きてきますし、経験則に頼らない数値の分析ができると言う点でメリットがあるものと言うことができます。
工事前から終了後に至る様々な書類を簡単に作成できる
建設業に携わる方であれば、工事開始前から工事終了後に至るまで、様々な書類を作成する必要があることを理解されているに違いありません。そのために何度も同じ数値を入力したり、異なるフォーマットを作成するなど作業が多くなるものです。
ですが、原価管理ソフトを利用すると、データの流用が簡単にできるため、重要な書類にヒューマンエラーが出てしまうことをかなりの程度防ぐことができます。たとえば、原価や粗利の情報を入力しておくことで簡単に見積書にコピーしたり、その情報を元に発注書などを自動で作成することができるものがあります。
材料などが追加されたり、単価や数量が変わっても、一つ一つ書類を直す手間がかかりませんから、チェックの不備などによって間違った数値が得意先に行ってしまうということも避けられます。請負業者が必要とする一括有期事業届出書類や労災保険料の計算にもこれらのデータを使用して簡単に計算書類を作成できるものがありますから、同じ数値を異なるフォーマットに何度も入力すると言った事務作業の削減ができますし、数値を作ることではなく分析する側の人員を確保できます。
業界特有の事情への対応がしやすくなる
建設業では非常に多くの会社が集まって作業にあたるプロジェクトも少なくありません。関わる業者の数も多いですし、それぞれの会社のサイクルがありますから、資金繰りを正確につかむためには細かい情報を反映できる原価管理ソフトが役立ちます。
特に建設業では支払のスパンが長い会社もありますし、支払方法も振込だけでなく、支払期日が長い手形を利用することも多いため、人に頼った管理ですとどうしてもエラーが起きるものです。今出されているソフトでは、複雑な支払基準を設定できるものも出てきていて、発注データや資金繰り表などに簡単に反映することができるようです。
業者から受け取る書類の種類が増えていくと、特定の人が情報を握ってしまっていて保存先を探すのに時間がかかる場合もありますが、原価管理ソフトでは登録した業者ごとに様々な書類・写真などを一括で保存しておけるものもありますので、関係者が容易に書類確認できると言うメリットがあります。
加えて、最近では作業員が現場に直行直帰している事情を考慮して勤怠情報をスマートフォンなどで送信できる仕組みがありますが、それらの対応が可能なソフトでは勤怠入力の手間が省けます。
社内システムとの連携が容易になる
原価管理ソフトを利用することで、社内システムとの連携が容易になるケースが多く見られ、業務効率化に役立っています。原価に関わる人員はたくさんの部署にまたがるため、そのすべての人が原価管理ソフトを使用して仕事を行うわけではなく、エクセルなどの表計算ソフトを多用されることも多いようです。
その事情を考慮して、エクセルやCSVデータを読み込むことができるソフトが出ています。データのフォーマットは整えなければならないものの、他部署からもらった原価データをまた入力しなおす煩雑さがなくなりますし、スピーディーな数値の把握につながります。インプットの部分だけでなく、アウトプットの面でも社内システムとの連携は容易にできます。
たとえば、会計ソフトに連携が可能なものや、勤怠データを給与計算ソフトに転送することが可能なものもあります。承認機能が充実しているものもありますから、社内の内部統制ルールに沿った運用をすることもできます。材料などのデータは入出庫管理や在庫管理に反映することもできますし、社外への請求データの作成にも役立てられます。
特にシビアで複雑な原価のマネジメントを必要とする建設業では、原価管理ソフトを取り入れると良い理由があることがわかります。作業効率を上げることだけでなく、多種多様な書類作成や社内との連携を考えると導入のメリットはたくさんあると言えます。