原価管理ソフトが解決できる企業の課題とは
原価管理と聞くと、小売業だけでサービス業には関係ないと思う人は多いのではないでしょうか。実は、あらゆる業種において原価は関係しきます。原材料や人件費などさまざまな箇所で発生しうる要素であり、なおかつ人手で管理するのは大変という点も共通です。ここでは原価管理ソフトを導入するメリット、解消できる企業の課題について解説します。
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適切な原価計算方法を選択できて業務負担が削減できる
原価管理の基礎ともいえるのが原価計算で、製品・サービスや目的に見合った計算方法によって算出します。一定期間における原価を費目別に分類および測定する「費目別計算」、費目別計算によって算出された要素を原価部門別に集計する「部門別計算」、この2つの計算によって製品にどれだけ経費を使ったかを判別させる「製品別計算」が代表的です。
複数種類がある中から用途・目的に合った計算方法を選ぶことが大切ですが、どの方法も複雑でありマッチする計算法を探すのも難しいでしょう。たとえば社内の管理目的で使用されることが多い「標準原価計算」ですが、財務諸表を作成するうえでの利用は認められていません。この場合は、実際原価計算や全部原価計算を使う必要があります。
必要に応じた計算方法を使い分け、さらにExcelなどで管理しなければならず手間がかかります。原価も物品によっては変動が激しい品目もあるため、専属の人員を用意しても大きな負担がかかるのは避けられません。
原価管理ソフトには、複雑な原価計算を効率よくおこなえるよう優れた原価計算機能が備わっていることが多いようです。特定のデータを入力することで原価計算ができるため、数ある業務の中でもとくに負担のかかるものを効率化できる点は企業にとって非常にプラスになります。
原価をもとに原価管理および継続的な収益が見出せる
原価管理ソフトを使う目的は原価を把握するだけではなく、現在の課題点の発見や継続的に利益を生み出すための計画を立てることでもあります。さまざまな方法によって算出された原価を基に、製品やパーツの選別に無駄がないかを判断したり、判明した結果により仕入れ先を見直したりなど課題点の把握は企業の成長に不可欠です。
加えて将来の展望を見渡して、継続的な利益を生み出し続けるにはどうすればよいか、現在よりも利益を上げていくにはどんな施策が必要かという点も分析しなければなりません。そもそも管理という単語の意味をそのままに捉えてしまうと、原価管理を行う本来の意味を見失ってしまいます。継続的に利益を生み出す仕組みを作ることが原価管理の本質であり、単純に在庫管理のように原価の管理をしていただけでは原価管理とはいいがたいです。
原価計算を原価管理ソフトの手によってスムーズにして、より効率のよい原価管理が可能となります。そこで得た情報を基に、PDCAサイクルを回していくことが最も重要です。現在の状況を把握および分析して、将来の展望からどこまで外れているのかを見出し計画を再編します。改善していくことで、継続して利益を生み出す仕組みを作れるようになるでしょう。こういった一連の分析と将来の展望、計画の見直しというサイクルをスムーズにする効果があります。
損益分岐点の見極めが容易になる
原価管理といえば忘れてはならないのが、損益分岐点の見極めです。生み出している利益および支出額に対して、どれだけの売上高が必要であるかを算出することは経営を続けるうえで不可欠です。損益分岐点とは必要な経費を収益でカバーでき、損益がゼロになった以降は利益となる時点の売上高を指します。
売上高のすべてが利益となる訳ではなく、人件費や家賃など経費を差し引いた額で利益を出していくことです。その費用とは売上に比例して増加する「変動費」、売上に関係なく発生する「固定費」の2種類を指します。原材料費や仕入原価、外注費・販売手数料などが変動費となり人件費や地代家賃・リース料、広告宣伝費などが固定費です。とくに売上高の額に関わらず発生する固定費については、利益を発生させる上で必ず回収しなければなりません。
売上高に比例して増える変動費を上乗せした状態で、さらに上回る売上高の額を計算することが重要です。原価管理ソフトで計算すれば、容易に経営上の問題が表出するでしょう。ある程度以上の利益を生み出すには現在の価格設定は低過ぎる、材料の原価が高いなど早めに気付くことで効率よく経営戦略を立てられます。
損益分岐点を把握するには、あらゆる固定費・変動費を計上しなければならず非常に手間がかかるものです。ソフトの機能をフル活用して、業務の負担を軽減しつつより綿密な経営計画を立てていきましょう。
コスト削減および支出を減らすことができる
コスト削減というワードから、節電や人件費の削減をイメージする方は多いものです。節電はもちろん、空調機や照明など省電力の製品を導入すれば年間のコストを下げられます。しかし人件費の削減は難しく、組織内のモチベーション低下や人材流出のリスクが高く採決しづらいでしょう。
一方、見落とされがちなコスト削減の要素は製品やサービスです。販売している製品の仕入れ先や輸送費、部品の見直しでコスト削減できる場合もあります。店舗や事務所の維持管理のサービスや製品のメンテナンスなど、日頃当たり前に利用している箇所にこそ改善点が眠っています。
製品やサービスの原価からコスト削減できるポイントが発見できれば企業全体にとってもメリットが大きいです。この点においても原価管理が重要であり、正確に原価を把握して問題点や改善点を洗い出すことが必須となります。分析機能が搭載されている原価管理ソフトを用いて、コスト削減のための分析を効率よく行いましょう。
原価変動のシミュレートにより計画立案や方向性を決めやすい
原価は市場の情勢や景気によって大きく左右され、常に変動し続けます。継続的な利益を生み出すため、引いては最適な原価を維持するためにもさまざまな状況を想定して計画を立てなければなりません。とくに生産業の現場ではどんな額の原価の商品を作ればよいか、利益を出す上で適正な販売数量はどの時点かなど常に疑問を抱き続けているでしょう。
その際に非常に役立つのが、ソフトに搭載されている原価変動のシミュレーション機能です。原価を構成する要素の中でリスクとなりうる変動要因を予測して、収益に与える影響度を分析します。仕入れ先の変更や為替の変動、原料費の高騰などあらゆるケースを想定し、その際の原価変動をシミュレートできます。すなわち企業によって重要かつなかなか知り得ない、未来の情報が手に入るのです。
また過去の販売や製造実績を参照する機能を搭載しているソフトもあり、新製品の販売数量の決定や原料価格変動時の対策などが容易になります。製造ラインを変更した際のコストや、設定した売上予算を基に起こる販売シミュレーションなども可能です。これらの機能を活かして、より大きな視野かつ多角的に試算・計画立案をしましょう。
社内で共有できるため全体での効率化にもつながる
現在リリースされている原価管理ソフトの多くは、他の業務管理系ソフトと連携する機能を搭載しています。さらには一元的に管理できる統合基幹業務システム(ERP)として、最初から導入できるソフトも存在します。企業が所持する物品や財源、人材や情報といった経営資源をまとめて有効活用できるのが「ERP」です。導入により仕入・調達や生産、在庫や物流・販売といった部門ごとにわかれていた項目を一括で管理できます。
ひとつの部門だけの利益を追求する部分最適化を改め、全体の利益化へと進化させる、販売と生産など関連する業務同士の連携や効率化という面で有利です。なおかつ全体的な情報共有のスピードアップを促し、経営戦略や計画決定の速度上昇も可能です。
他のソフトと連携することでさらに大きな効果が期待できます。各システムとの連携で多くのデータ入力作業が効率化され、リアルタイムな経営情報の可視化も容易です。企業全体への共有、効率化を実装してこそ真の効果が発揮できるといえます。
原価管理は業種や組織の大小の規模を問わず、あらゆる企業にとって重要です。経営計画を立てる時も継続的な利益を生み出すうえでも必須ですが、一方人手で管理を適切に行うには困難を極めます。現状の問題点を洗い出し損益分岐点を見極め、利益を生み出す仕組み作りや業務効率化を図るためにも原価管理が容易なソフトの導入を検討しましょう。